家電等の電気製品の製造・輸入事業者がPSEマークを表示して製品を販売する要件の一つに「自主検査」があります。技術基準を満たしているか検査機関に検査を依頼するPSE試験(基準適合確認や適合性検査)とは異なり、製造者・輸入者自身が製造した電気機器全数に対する検査を行う義務となっています。
このページでは自主検査について解説していきたいと思います。
なお、下記ページでPSE認証・電気用品安全法の全体像を把握しておくと理解しやすいと思います。
>PSE認証・電気用品安全法
自主検査の具体的な検査項目・内容の策定は電安法の深い理解と技術基準の読解が必要です。
工場任せの場合もあるかと思いますが、不備があると電安法違反となりますので、ご不安な場合はお問い合わせください。
下の図は経済産業省のHPから引用したPSEの届出・手続きの流れです。
図の後半にある「自主検査」義務を果たすことで、製品にPSEマークの表示を付して販売する事ができます。
自主検査は法令で以下のように定められております。
"届出事業者は電気用品の製造又は輸入を行う場合、国が定めた検査の方式により検査を行い、検査記録を作成し、これを検査の日から3年間保存する必要があります。"
簡単に言うと、製造・輸入する製品は国が定めた検査方法により全数検査をして、その検査記録を3年間保管する義務があるという事です。
たまに混同されている方がいらっしゃいますが、自主検査は試験機関に委託するPSE認証試験とは異なり、全ての製品を製造者・輸入者が自身で検査を行って記録を保管する義務となるため注意が必要です。
PSE試験(基準適合確認や適合性検査)のレポートを用意した時点で安心してしまい、自主検査義務を知らなかったり怠ってしまっている事業者様が多々おられますが、自主検査はPSEマークの表示を行うための要件であり、不備があると電安法違反にもなるため正しく把握し、実施しなければなりません。
検査の方式・検査方法は、省令において以下のように特定電気用品と特定電気用品以外の電気用品についてそれぞれ定められています。
特定電気用品
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製造工程検査
製造工程にて基準に適合させるため適当と認められる方法で、常時構造、材質及び性能について行う
完成品検査
外観、絶縁耐力、通電等の検査を電気用品ごとに規定された内容に従って行う
試料検査
一定の場合に材料、部品、半完成品又は完成品から任意に抽出した試料について行う
特定電気用品以外の電気用品
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電線管類及びその附属品、ケーブル配線用スイッチボックス、ヒューズ、白熱電球、蛍光ランプ、装飾用電灯器具
🔻外観検査
ベルトコンベア及び理髪いす
🔻外観及び絶縁耐力検査
リチウムイオン蓄電池
🔻外観及び出力電圧
その他
🔻外観、絶縁耐力、通電検査
特定電気用品以外の電気用品(丸型PSE)については製品に対する全数検査を電気用品ごとに規定された検査内容で行います。
一方、比較的構造が複雑で事故危険度の高い特定電気用品(ひし形PSE)の自主検査は、製品そのものの全数検査だけではなく製造工程での構造、材質及び性能の検査や、場合によって材料、部品、半完成品又は完成品から任意に抽出した試料の検査も必要となります。
いずれの場合もそれぞれの電気用品の技術基準を把握しながら、規定された基準に従って製造されているかを全ての製品について検査しなければなりません。
自主検査は製品全数に対する検査であり特に輸入事業者が輸入後に検査するのは負担も大きいため、輸入製品の場合は製造工場に協力を仰いだうえで製造と同時並行で自主検査項目を検査してもらい、検査票を入手する方法が一般的です。
検査内容の決定
製造する家電などの電気機器がどの電気用品の区分・電気用品(品目)にあたるかを判別し、必要な検査内容を確認します。
例えば家電の「電気洗濯機」であれば、特定電気用品以外の電気用品のその他にあたるため、検査内容は外観・絶縁耐力・通電検査です。
具体的な検査基準の決定
検査内容が判別できたら、次に具体的な検査基準を確定させる必要があります。
合否の判定基準となる検査基準はそれぞれの電気用品ごとに規定された技術基準の内容となるため、技術基準をよく読みこんだ上で該当する基準を適用しなければなりません。
検査に必要な設備や機材の用意
正確な検査を実施するために、検査設備や機材についても法令で規定されています。
詳しくは「電気用品安全法施行規則 別表第四」をご確認頂きたく思いますが、機材や測定機に必要な機能や精度等級等が明記されているため、対応した設備や機材を用意した上で検査を行う必要があります。
いつ、どこで検査を行うかの決定
製造・輸入が完了した後に倉庫等で検査をするのか、それとも製造工場で製造と同時並行で検査を行うかを検討し、決める必要があります。
既に触れたように自主検査は電気製品全数に対して行う必要があるため、製造完了した製品をいちから全数検査を始めるのは負担が大きく非効率です。特に輸入事業者が輸入後に検査を行う場合、輸入後納品された製品を倉庫等で一つずつ開梱して検査を行わなければならず、時間的にも費用的にも大きな負担となります。
そのため、製造事業者・輸入事業者いずれの場合においても工場の製造ラインで製造しながら自主検査も同時並行して行う事がおすすめです。
輸入事業者の場合海外の製造工場の協力が不可欠ですが、生産時に自主検査を行う事ができれば費用も時間も節約できます。海外工場でも製造時に品質管理の一環として独自に検査を行うことは一般的ですので(PSE基準ではありませんが)、自主検査基準を伝えた上で追加検査を依頼してもそれほど工場側の負担にはならないと思います。
また工場であれば検査設備や機材が揃っていることがほとんどなので、設備等の心配もありません。
なお、当事務所では請け負っておりませんが自主検査の実施を代行する業者もあります。
海外工場での検査であれば現地の第三者品質管理会社等が、輸入後等の日本にある在庫製品に実施する場合は日本の検査代行会社がそれぞれ請け負っております。
状況に応じて柔軟な選択肢を持ちながら正しく実施していくことが大切です。
検査記録に記載するべき事項は、以下のように定められています。
・電気用品の品名及び型式の区分並びに構造、材質及び性能の概要
・検査を行つた年月日及び場所
・検査を実施した者の氏名
・検査を行つた電気用品の数量
・検査の方法
・検査の結果
書式、様式は決まっていないため、上記内容を盛り込んで記録を作成すれば問題ありません。そしてこれを検査の日から3年間保管します。
この自主検査記録の作成・保管を正しく実施し、製品にPSEマークを表示することで、晴れて販売等の流通開始ができます。
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※参考・出典:経済産業省ホームページ
自主検査の全体像はご理解いただけましたでしょうか。
もし自主検査の進め方や、内容に対応する技術基準の判別や検査記録書類の作成にご不安をお持ちでしたら、当事務所で検査記録用のフォーマットを代行して作成いたします。
必要な検査内容等を調査し盛り込んだ検査記録フォーマットを作成いたしますので、是非お気軽にお問い合せください。
このフォーマットを工場に共有することで、生産と同時並行での自主検査がスムーズに実施できるはずです。